企業や官公庁において、大規模システム開発や設備投資を行う際には社内で方向性を検討するために外部からの情報提供を募る場合があります。これは、RFI(Request for Information)と呼ばれており、何らかの製品やサービスに関する情報を外部から募集することを意味します。
本記事では、RFIの意味や目的を始めとした基本的な部分からRFPとの違いや具体的な流れなどを、これからRFIについて知ろうとしている方にもわかりやすく解説しています。ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
目次
- RFIとは何か?
- RFIに記載する内容
- RFIで収集する内容
- RFIを実施する3つのメリット
- RFIで注意すべき3つのポイント
- まとめ
RFIとは何か?
ここではRFIとは何かという基本的な部分を始め、RFIの目的や位置づけについて解説します。また、類似した用語であるRFPとの違いについて説明します。
RFIとは
RFIは日本語に直すと情報提供依頼書という意味であり、外部に対して広く情報提供を募るために実施されます。企業や官公庁がサービスや製品の調達を行う際の検討材料を得るためにRFIが発出されるケースが多いです。
RFIでは各企業に対して詳細な質問を投げかけるため、WEBサイトやパンフレットで一般公開されていない情報を収集することができます。また、RFIはあくまでも情報提供を依頼することが目的であり、調達先の選定は行わないことが大きな特徴です。
RFIの目的
RFIはどのような目的で実施されるのでしょうか。RFIの主要な目的はサービスや製品の調達にあたって、検討を進められるだけの十分な情報を得ることです。企業や官公庁が調達を行う場合、当然ながら候補となる製品やサービスに関する情報を集める必要があります。
一般的にインターネットでの検索や窓口への問い合わせで得られる情報は、製品の仕様や標準価格などの基本的なものに限られるケースが多いでしょう。より詳細な情報を得るためにはRFIへの回答という形で各企業から直接情報を得ることが必要です。
RFIを実施しない場合、十分な情報が無いまま調達に進むこととなり、契約先のサービスが目的にそぐわない、相場よりも高い費用を支払ってしまうなどのリスクがあります。このようなリスクを回避するために、実際の入札や調達に先立つ形でRFIを実施するのです。
RFPとの違い
RFIと似た用語に、RFPというものがあります。RFIとRFPにはどのような違いがあるのでしょうか。端的にいいますと、RFIが「Information=情報」を求めるのに対し、RFPは「Proposal=提案」を求めることが大きな違いです。
具体的には、RFIでは企業や官公庁が将来的に必要とする製品やサービスに関する情報を求める一方で、RFPでは工事、システム開発など現状の課題解決を目的とした提案を要求します。
RFPを実施することで調達先のスキル、実績、提供するサービスや製品の仕様を比較検討することができ、よりニーズに即した調達先を選定することが可能です。一方で、RFPを出す側も調達先から適切な提案を受けられるように具体的な仕様や前提条件を定めることが必要であり、これには対象分野の知識やスキルが要求されることに注意が必要です。また、RFPを準備するための時間や手間も考慮しなければなりません。
RFIに記載する内容
RFIは外部に対する公表文書になるため、記載項目については正しく理解しておく必要があります。ここでは、RFIの記載項目の中でも重要なものについて説明します。
情報提供の様式と期限
RFIを発出する際には、回答する側がどのような様式で、いつまでに回答する必要があるのかを明確に示すことが必要です。例えば、回答文書の作成に利用するソフト(Microsoft Word等)、目次構成、各項目に使うページ数などの項目をRFIに回答する際のルールとして整備します。もし情報提供の様式を定めなければ各社が独自の方式で回答することになり、回答結果の取りまとめを行うのに必要以上の労力がかかってしまうでしょう。
また、RFIの後に調達や入札が控えている場合には、可能な限り早期に回答を得る必要があります。そのため、適切な期限の設定も必須です。ただし、回答内容や回答準備にかかる時間を加味して無理のない期限設定をするよう注意しましょう。
情報提供の前提条件
RFIでは情報提供における前提条件を正確に記載することが重要です。例えば、システム開発におけるRFIにおいては、システムが構築される環境やOS、開発手法、開発に使うプログラミング言語(Java、Python等)など様々な前提条件が存在し、これらが明確になっていない場合、依頼を受けた側がどのような回答を準備すべきか迷うことになります。
前提条件の記載にはRFIを発出する側にも正しい知識と経験が求められるため、RFIを準備する段階で対象の分野に知見のある担当者に参画してもらうことが重要です。
情報提供する側からの質問や問い合わせのルール
RFIの内容には関わらない部分ですが、RFIに参加する企業からの問合せルールも明文化しておくことが重要です。問合せ先、連絡手段、回答までの目安などを明確にしておくことで担当部署以外に問合せが来ることなどを回避できるでしょう。
また、可能であれば事前にRFIに関するFAQを準備しておくことで、問い合わせ対応にかかる手間を省くことができます。効率的なRFIを実施するためには上記のような問い合わせルールの整備も重要です。
RFIで収集する内容
RFIで収集する情報は、工事なのかシステム開発なのかなど目的によって様々です。しかし、どのようなRFIにおいても共通して重要な情報があります。ここでは、RFIにおいて特に着目すべき情報について解説します。
RFIに参加する企業の情報
RFIにあたっては参加する企業についての詳細な情報を要求します。企業の沿革や業務内容といった表面的な情報は公式サイトでも確認できるため、これまでの業務実績、競合他社と比較した強み、今後注力していく事業など一般的に公開されていない情報の提供を求めることが重要です。
また、RFIに回答する企業は将来的なビジネスパートナーとなる可能性があります。そのため、RFIに記載された企業情報から自組織と価値観を共有できるかといった観点も持って回答内容を吟味するとよいでしょう。
必要となる製品やサービスの仕様
RFIへの回答における必須項目として挙げられるのが、提案される製品やサービスの仕様です。いくら優れた製品やサービスであっても、ニーズにそぐわなければ意味のないものになります。
各社が提供する製品やサービスの仕様についての詳細情報を求めることで、自組織のニーズに合致しているかを確認し、ミスマッチを防ぐことができます。もしRFIの段階で目的に合わないことがわかれば、調達前に候補から外すことができ、より質の高い比較検討が可能になるでしょう。
提案する製品の強み、メリット
RFIには将来的に複数の選択肢を比較検討することを見据えて、各社が提供する製品やサービスの強み、セールスポイントを記載する回答項目を設けましょう。
RFI時点では複数社の候補があるケースが多いものの、最終的には1社に絞り込むことになります。入札や調達前に各社の強みを把握することで、事前に有望な企業を選別する上で有力な検討材料になるのです。
RFIを実施する3つのメリット
ここでは、RFIを実施することで期待できるメリットについて代表的なものを紹介します。
効率的な情報収集ができる
RFIを実施することで期待できるメリットの一つは、入札や調達に向けた効率的な情報収集が可能になる点です。RFIへの回答という形で複数社から情報を得られるため、自組織の人的リソースを使うよりも効率的に情報収集ができます。
WEBサイトや問い合わせ窓口からの情報は、あくまで表面的な情報に過ぎないことが多いため、RFIを実施することでより詳細かつ具体的な情報を受け取れるでしょう。ただし、有意義な形でRFIを実施するためには、質問事項や前提条件などの事前準備は抜かりなく行う必要があります。
取引先企業を事前に選別することができる
RFIを調達や入札に先立つ形で実施することで、ある程度有力な候補を絞り込むことができます。RFIでは調達先の選定は行わないものの、回答結果から自組織のニーズや価値観に合致する企業の目星をつけることができるでしょう。
例えば、人事領域でのクラウドサービスに関するRFIを実施した場合に、該当する領域で役立つ製品を持たない企業や重点的に取り組んでいない企業はRFIの段階で候補から外れます。逆に、対象領域で強みがあり、事業拡大を目指す企業は積極的に応募してくる可能性があるでしょう。
また、調達や入札に参加する側としても、RFIによって欲しいものが明示されることで、自社のサービスや製品がニーズに合致しているかを事前に把握することができ、無駄な提案や問合せ対応を回避できるというメリットがあります。
取引先企業の姿勢を把握することができる
RFIを実施することで、各社がどれだけ真摯に入札や調達に関わろうとしているか知ることができます。
RFIへの回答は営業活動の一環として扱われることが多く、直接的に売上につながりませんが、それでもなお積極的に参加してくる企業であれば、将来的に有望なパートナーとなる可能性があるでしょう。
例えば、日常的に取引がある企業の中でもRFIに参加する企業とそうでない企業がある場合、彼らが自組織との取引を重視しているのか否かを判断することができます。
当然ながらRFIへの参加だけで判断できない部分もありますが、取引先業との今後の付き合い方を考える上での判断材料となるでしょう。
RFIで注意すべき3つのポイント
RFIを実施するメリットがある一方で、注意すべき点もあります。ここでは、RFIを実施する上での注意点について代表的なものを紹介します。
RFIを実施する背景を明確にする
RFIは情報収集であるとともに、なぜRFIを実施するのか、将来的に何を目的としているのかといった情報を開示することが求められます。これらの情報が不足していると、取引先企業側でも参加することで意義があるRFIなのかどうかが判断できず、どこからも情報提供が得られないという事態になりかねません。
また、RFIに応じる企業としてもRFIの内容から将来像が見いだせない場合、新規ビジネスの開拓につながるイメージが持てず、RFIに応じるモチベーションを失う可能性があります。RFIを有意義なものにするためにも、文書にはRFIを実施する背景や目的などを正しくかつわかりやすく記載しましょう。
簡潔な文章を心がける
基本的な部分ではありますが、RFIに記載する内容は応じる側の立場になってわかりやすい文章にするよう心掛けましょう。内容以前にRFIの記載が読みづらい文章になっている場合、RFIに対応する側のモチベーションが削がれてしまうリスクがあります。
また、RFIは将来的なビジネスパートナーを選別する場でもありますが、同様に相手方の企業からも選別されていることを忘れずに回答する側の立場に立った文書作成を心がけましょう。
情報提供を依頼する項目は細かくなりすぎないようにする
RFIの項目はわかりやすく記載すると同時に、情報提供を依頼する内容や要件が細かくなりすぎないように注意する必要があります。依頼内容が細かくなりすぎると、依頼先が回答するまでの時間がかかる、問合せが多数発生するなどの弊害が出てしまうでしょう。
あまりにも答えるべき項目が多数かつ複雑になると、RFIに応じる企業が減るリスクもあります。可能な限り要望事項は簡潔に記載するとともに、1-2週間を目安に回答できる内容にしましょう。RFIに応じる企業も通常業務の合間を縫って対応していることを意識して、相手に配慮したRFIを出すようにしたいものです。
まとめ
RFIは企業や官公庁が入札や調達に先行して、将来的な選定候補となる製品やサービスの情報を事前に収集し、比較検討を行う目的で実施されます。RFIを行うことで、効率的な情報収集や候補となる取引先の絞り込みが行える一方で、RFIへの記載内容は明確かつ伝わりやすい内容にするよう配慮が必要です。本記事を通してRFIにおける勘所を理解し、RFIについて詳しく知るきっかけとしていただければと思います。