RFIが「Request for Proposal」の略称であり、自組織のニーズを満たすために外部に情報提供を依頼することを意味します。RFIは企業や官公庁が入札や調達といった形で何らかの製品やサービス、業務委託を行う際に事前に実施されることが多いです。
本記事ではRFIの基本的な概要や実施する理由を始めとして、RFIに記載する項目、質問内容などの具体的な内容も含め、これからRFIに関わろうとしている方にもわかりやすく解説しています。ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
目次
- RFIとは何か?
- RFIの流れ
- RFIで相手方に開示する情報
- RFIを実施する際の留意点
- RFIの事例
- まとめ
RFIとは何か?
ここでは、RFIの基本的な意味、実施する理由を始め、RFIで提供を依頼する情報について説明します。また、RFPやRFQといった混同しやすい類似用語についても解説します。
RFIとは
RFIは情報提供依頼書という意味であり、企業や官公庁がサービスや製品の調達を行う際に提供されるサービスや製品の情報を要求するものです。
実際の調達や入札に先立つ形で各社から情報提供を求めることで、WEBサイトやパンフレットで一般公開されていない情報を得るとともに、調達や入札で公表する仕様や前提条件を検討材料となる情報を収集します。RFIはあくまでも情報提供が目的であり、調達先の選定は伴わないことが大きな特徴です。
RFIを実施する理由
RFIの目的はサービスや製品の調達にあたって必要な情報を得ることです。企業や官公庁が調達を行う場合、一般消費者向けの製品やサービスと違いWEBサイトやお客様窓口などから入手できる情報には限りがあります。
そのため、事前に詳細な情報を得ずに入札や調達を行った場合、ニーズや予算に合わないことが事後に判明するなどの事態が起こりうるのです。このような、リスクを回避するために実際の入札や調達に先立つ形でRFIが実施されています。
RFIで入手する情報
RFIではどのような情報の提供を依頼するのでしょうか。具体的には、サービスや製品を提供する相手方の企業情報、 製品やサービスの仕様、導入実績が質問事項となります。
RFIでは上記に加えて相手方企業の得意分野、セールスポイントなども質問事項にするとよいでしょう。そうすることで、候補となる企業を比較検討する際の軸を作ることができ、後にRFPを出す際にも何を重点的に提案してもらうのかを決めやすくなります。WEBサイトの情報や問い合わせでは手に入らないような、質の高い情報を入手できるよう質問事項を工夫することがRFIを成功させる秘訣といえるでしょう。
RFPやRFQとの違い
RFIと類似した用語にRFPとRFQがありますが、RFIとどのような違いがあるのでしょうか。RFPとRFQでは、RFIと要求するものが違います。RFPは「Proposal=提案」を求める一方で、RFQは「Quatation=見積もり」を求めることが大きな違いです。
RFPでは現状を踏まえた課題解決を前提とした各社の提案を要求することができます。一方、RFQは、ある製品やサービスについて具体的な金額回答を求めることができ、コスト比較を重視する場合には役立つ手法です。
RFPやRFQではRFIよりも踏み込んだ情報が得られますが、相手方が回答しやすいようにRFIよりも詳細な前提条件を定める必要があるため、依頼する側にも該当分野の知見が必要となります。
RFIの流れ
RFIを発行するまでにはいくつかのプロセスがあります。ここでは、RFIにおける全体の流れについて順を追って解説します。
候補となる取引先をリストアップする
RFIに先立ち、情報提供を依頼したい取引先をリストアップする必要がある。RFIを出す側の人的リソースも限られていますので、候補となる企業すべてに対してRFIを発行することは現実的ではありません。
そのため、最初にある程度的を絞っておく必要があるのです。事前に絞り込みを行うことで、RFIにかかる業務量を効率化するとともに、ニーズに合わない情報が提供されるケースも減るでしょう。
提供依頼したい情報の前提条件を定める
一般的に製品やサービスのカタログに書かれている情報をRFIで提供依頼することはありません。RFIでは、ある特定の前提条件において最適な製品やサービスについての詳細な情報を求めます。そのため、RFIを発行する側は、欲しい情報の前提条件について検討を重ねた上で質問を作成することが必須です。
例えば、システム開発の案件であれば開発環境、実装方式(クラウドかオンプレミスか等)、開発言語など様々な前提条件をおく必要があります。この場合、ある前提条件が変わるだけでも対応できる企業が大きく変わることから注意が必要です。
RFIの発行
RFIへの記載内容が決まると実際にRFIを発行するフェーズに移ります。官公庁などでは公告という形で広く募る方式をとりますが、民間企業では既に取引のある企業や事前にリストアップした企業に絞って依頼するケースもあるでしょう。
RFPにおいては最終的に1社に絞り込む必要があることから、提案内容のプレゼンを行うケースが多いです。しかし、RFIにおいても回答内容を詳しく理解するために相手方企業から説明を求めることがあります。
受領したRFIの精査
依頼先の各社からRFIへの回答を受領した後は、その内容を精査するフェーズに入ります。RFIはRFPと違いある命題に対する提案書が来るわけではないため、この段階で相手方企業の優劣を断定できるわけではありません。
しかし、回答内容の精度から会社としての取り組みの優先度や熱意、製品やサービスの強みなど判断できる要素が多いため、実質的にはRFIも相手方企業を選別して絞り込む目的で行われることが多いです。
RFIで相手方に開示する情報
RFIでは相手方企業に情報提供を依頼するだけではなく、RFIを発行する側の情報も開示しなければなりません。ここでは、RFIを発行する側がどのような情報を開示すべきなのかについて解説します。
RFI発行元の情報
RFIは本来回答者となる相手方企業の情報を得ることが目的ですが、RFI発行者がどのような会社あるいは組織であるのかを開示して双方を正しく知るための機会でもあります。RFIにおいては相手方企業とギブアンドテイクの関係であることを意識し、RFI回答に必要な情報は惜しみなく開示する姿勢が求められるのです。具体的には、自社の企業情報や沿革を始め現在注力している事業内容なども記載するとよいでしょう。
RFIを発行した背景や目的
RFIにおいては、RFI発行元の情報に加えて、自組織が置かれている状況、将来に向けた取り組み状況なども開示しましょう。
例えば、将来的に営業職の働き方改革を目指してオンライン商談システムを導入したいのであれば、必要な製品やサービスに関する質問だけではなく、それらが必要となる背景や組織として目指す将来像についても可能な限り具体的に示すべきです。
RFIに回答する企業は将来的にビジネスパートナーとなる可能性があるため、自組織についてよく知ってもらうことで今後の関係性強化にもつながるでしょう。
必要な製品やサービスの前提条件
RFIでは質問事項についての前提条件を詳細に記載する必要があります。情報提供を依頼する製品やサービスにはある環境や条件下で効果を発揮するもの、逆にある環境では利用できないものが存在します。
このような前提条件をRFIに記載しておくことで、RFIに対応する側も質問に対してスムーズに回答できるでしょう。また、前提条件が明確になっていることで、ニーズに合致しない企業は始めからRFIに参加しないため、候補の絞り込みにも役立ちます。
RFIを実施する際の留意点
RFIを実施する際にはいくつか注意すべき点があります。ここでは、RFI実施時に特に注意すべき点について解説します。
相手方に伝わりやすい内容にする
RFIに限らずビジネス文書全てに共通するポイントですが、RFIはわかりやすく記載すると同時に質問事項が複雑にならないように注意する必要があります。
RFIにおいて質問の意図が汲み取りにくい、前提条件が複雑であるといった場合、依頼先が回答するまでに長い期間を要する、あるいは質問内容に対する問合せが多数発生するなどの弊害が出るでしょう。また、質問内容が曖昧であると本来はニーズを満たしていない企業からの回答が来る、逆に回答が欲しい企業からは回答が来ないといったケースも起こりえます。
可能な限り、RFIに記載する要望事項は簡潔に記載し、対応する相手方のモチベーションを下げないように配慮することが重要です。
前提条件に抜け漏れがないように注意する
RFIは単純に既存の情報を受け取ればよいというものではありません。RFIにおいては、いくつかの前提条件の下で最適な製品やサービスについての情報を依頼することが一般的です。
先述の通り、システム開発の案件でRFIを出す場合は、ある一つの前提条件が抜けているだけで必要となる技術やスキルが大きく変わります。例えば、システムを開発するためのプログラミング言語がJavaなのかPythonなのかで確保すべきプログラマーのスキルが異なるため、前提条件が曖昧であるとRFIに回答する側も混乱してしまうのです。
RFIへの記載を検討する際には社内の有識者や該当する分野の経験がある人に内容のレビューを受けるようにしましょう。もし既存の人的リソースでは不足すると予想される場合は、コストはかかるもののコンサルティング会社の支援を受けるなどの対策が求められます。
相手方の特色や強みが現れやすい内容にする
将来的に複数の選択肢を比較検討することを見据えて、各社が提供する製品やサービスの強み、セールスポイントを記載する項目を設けましょう。入札や調達前に候補となる企業の強みを把握することで、事前に有望な企業を選別する上での検討材料になります。例えば、技術的な優位性、コストメリット、過去の導入実績などを質問する項目を設ければ各社の強みを把握することが可能です。
また、RFIの後には各社からの提案を受け取った上で審査を行うRFPが行われることが多いです。そのため、RFIの段階で各社の強みを把握できればRFPにおける評価項目、評価基準の検討もスムーズに進めることができるでしょう。
RFIの事例
ここでは、有益な情報収集につながる良いRFIとそうでないRFIについて実例を交えて紹介します。今後RFIの発行に関わる方には参考になるでしょう。
良いRFIの事例
良いRFIとはどのようなものなのでしょうか。良いRFIは発行元となる企業や組織の情報が開示されており、質問内容も明確でわかりやすいという特徴があります。また、RFIを通して何をしたいのかといった目的も明確になっていることが多いです。
例えば、システムのクラウド移行に関するRFIであれば前提条件として現行システムの環境、構成、クラウド移行に期待すること、移行先の候補となるクラウドサービス、稼働開始までの期間などが詳細に記載されていれば対応する側も回答しやすい内容となります。
相手方の立場に立った良いRFIであれば、対応する側も熱意を持って取り組むことが予想され、有意義な情報が得られるでしょう。
悪いRFIの事例
参考にできる良いRFIがある一方で、そうではないRFIもあります。悪いRFIの特徴は、求める情報が多すぎる、内容が複雑で難解といった点が挙げられます。
例えば、人事業務のパッケージシステム導入を目的にRFIを実施しているにもかかわらず、スクラッチ開発の業務経験を深く掘り下げるといった本来の目的からずれた記載をしてしまうことが考えられます。あるいは、一つの製品についてRFIを発行しているのにも関わらず、相手方企業で扱っている製品ラインナップ全ての仕様の回答を求めるといった的を絞れていないケースも悪いRFIといえるでしょう。
あまりにも質問の量が多すぎる、あるいは本来の目的から外れた質問になっていると回答までの時間がかかる上に、RFIを通して得たい情報が得られなくなるリスクがあります。
まとめ
RFIは、製品やサービスの入札や調達に先立つ形で実施されることが多く、調達先の絞り込みや比較検討を行う際の情報収集として有効な取り組みといえます。質問事項を簡潔かつ明確に記載するようにし、質問の前提条件についても詳細に記述することで、RFIをより有意義なものにできるでしょう。
本記事を通してRFIの基本的なポイントと注意すべき事項を理解し、RFIについて詳しく知るきっかけとしていただければと思います。