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競争優位性とは?新規事業に必要なMoat(モート)との関連性も含めて徹底解説!

企業がビジネスを成功させるため、また、新規事業を成功させるためには、市場で競争優位性を持つことが重要です。競争優位性とは、他社と比べて自社が有利なポジションに立つことを指します。しかし、その競争優位性を獲得し維持するためには、新規事業の検討の時点で競合他社と差別化するアセットの確立が必要となります。

本記事では、競争優位性とは何か、どのような獲得すれば良いか、Moatとの関係性など、競争優位性に必要なポイントをまとめて詳しく解説します。

競争優位性とは何か

競合優位性自体の解説

競争優位性とは、ビジネスにおいて自社が他社よりも有利な立場にあることを指します。自社が他社と比較して優位なポジションに立つためには、他社が真似できない独自の価値を提供することが求められます。競争優位性を持つ企業は、他社よりも高いレベルで事業を実行でき、市場占有率が高くなります。

一方、競争優位性を持たない企業は、他社との差別化を図ることができず、顧客の獲得や売上向上が難しくなります。そのため、企業は競争優位性を獲得し、それを維持するための戦略を策定する必要があります。

競合優位性を強固にする概念Moat(モート)

競合優位性において似たような(ほぼ同じではあるが表現が異なる)概念としては、Moat(モート)が挙げられます。moatは英語で、堀、と直訳されますが、この堀とはつまり外敵から守るための塀であるということですね。

ビジネスや新規事業においては非常に重要な点で、ウォーレンバフェットとチャーリーマンガーがMoatに関して述べている映像は以下になります。

The most important thing, what we’re trying to do is to find a business with a wide and long lasting moat surrounded and with protecting a terrific economic castle with an honest Lord in charge of the castle and in essence that’s what business is all about. 
(投資や事業において)最も大切なこと、私たちが常に探し続けているものは、”広く、長い期間続く堀(Moat)”と、それが守る”素晴らしい事業という城”、そしてその城を司る”誠実な城主”です。本質的に、それがビジネスの全てです。

(1995年のバークシャーハサウェイ株主総会)

つまり、このMoatがないと新規事業としては、その企業・事業における独自の強みが無くなってしまい、他社と悪い意味で対等に戦うことになってしまい、その後に待っているのは大量の広告費の増加、つまり、札束の殴り合いという体力勝負が待っていることになります。

逆に言えば、Moatを築くことができれば、効率的に売り上げを上げることができるので利益率が上がることになります。
加えて、資金力に乏しいスタートアップであれば、広告費に頼ることなく自力で何かしらのアセットを築く仕組みを作ること(=Moatを築くこと)が、大手企業との資金力対決をせずに市場進出を果たすことができるということになります。多くのスタートアップがPMFを築くことに躍起になっていますが、それは大前提で、PMFを満たし、事業を推進する中で、Moatが強固になっていく…ということが理想的な姿になります。

よく新規事業やベンチャー・キャピタルの出資の検討の際には、独自の強みという点を重視されますが、この独自の強みとはサービス自体のリッチさではなく、このMoatがお金をかけずに築けているか、あるいはこれから築けそうかという点を非常に重要しています。

Moatの事例

では、Moatとは具体的にどのような要素によって築くことができるかと言えば、以下のような内容になります。

  • 革新的な製品やサービス: 新しい価値を市場に提供することで、顧客の心を捉え、強固な地位を築きます。
  • 特許や独自技術: 独自の技術や製品に関する特許を取得し、技術的な優位性を守ります。
  • ブランド力の構築: 強力なブランドイメージを構築することで、顧客の信頼と忠誠心を獲得します。
  • ネットワーク効果: 製品やサービスがより多くの人に使われるほど、その価値が増すビジネスモデルを実現します。
  • コスト構造の最適化: 効率的なコスト構造を実現することで、価格競争での優位性を確保します。

競合優位性を築くための3つの基本戦略

上記のMoatに加えて、競争優位性を獲得するための基本戦略は、経済学者マイケル・ポーターによって提唱されました。彼が提唱する3つの基本戦略は次の通りです。

1. コストリーダーシップ戦略

コストリーダーシップ戦略とは、企業が業界内で最も低いコストで商品やサービスを提供することを目指す戦略です。具体的には、大量生産による単位あたりのコスト削減や生産工程の効率化などにより、他社と同じ品質の商品・サービスをより安価に提供します。

この戦略のメリットは、低価格で商品・サービスを提供できるため、大量の顧客を獲得しやすいことです。また、コストを抑えることで利益率を上げることも可能です。

一方、デメリットとしては、価格競争が激化しすぎると利益が出にくくなることや、大規模な生産体制を構築する必要があることなどが挙げられます。

2. 差別化戦略

差別化戦略は、自社の商品やサービスに独自性を持たせ、他社との差別化を図る戦略です。具体的には、品質や性能、デザイン、ブランドイメージなどで、消費者がより魅力的に感じる価値を提供します。

この戦略のメリットは、競合他社と価格で争う必要がなく、顧客にとって「ユニークな商品」として認知されやすいことです。また、差別化により新規参入を阻止する効果もあります。

一方、デメリットとしては、差別化要素が模倣されると差別化が図れなくなることや、差別化のためのコストが高くなることなどがあります。

3. 集中戦略

集中戦略とは、特定の顧客層や製品カテゴリー、地域などに経営資源を集中させ、特定のターゲットに絞って差別化を図る戦略です。例えば、特定の年齢層や趣味を持つ人々、地域限定の商品などが該当します。

この戦略のメリットは、ニッチな市場で競争上の優位性を得られることと、経営資源を効率的に投入できることです。また、新規参入を阻止する効果もあります。

一方、デメリットとしては、特定の市場に依存しすぎると、その市場の変動に大きく影響を受ける可能性があることや、新規参入の競合が経営資源の豊かな大企業である場合、シェアを奪われやすいことなどが挙げられます。

分析フレームワーク

競争優位性を獲得するためには、適切な分析が必要です。ここでは、競争優位性を分析するためのフレームワーク「VRIO分析」と「ファイブ・フォース分析」について解説します。

VRIO分析

VRIO分析は「Value(経済価値)」「Rarity(希少性)」「Imitability(模倣困難性)」「Organization(組織)」の頭文字を取ったもので、企業の経営資源が競争優位性を確保する上でどの程度の価値を持っているかを評価するフレームワークです。

具体的には、以下の4つの観点から自社の経営資源を分析します。

  • 経済価値:自社の商品・サービスが、社会にどれだけの利益をもたらしているか
  • 希少性:自社の商品・サービスが、市場においてどれほど希少なものか
  • 模倣困難性:自社の商品・サービスが、他社にマネできないものになっているか
  • 組織:自社が上記3つの要素を活かすための組織体制を整えているか

これらの観点から自社の強みと弱みを把握し、競争優位性の強化につながる改善策を考えます。

ファイブ・フォース分析

ファイブ・フォース分析は、企業が置かれている競争環境を5つの視点から分析するフレームワークです。具体的には、以下の5つの視点から自社の競争環境を分析します。

  • 業界の競争の激しさ
  • 新規参入の脅威
  • 代替品の脅威
  • 取引先の交渉力
  • 顧客の交渉力

各視点から市場環境を分析し、競争優位性を確立するための戦略を策定します。

まとめ

ビジネスや新規事業において、競争優位性を持つためには、適切な戦略と分析が不可欠です。コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略の3つの基本戦略とVRIO分析、ファイブ・フォース分析のフレームワークを活用することで、自社の競争優位性を引き出し、ビジネスの成功につなげることができます。

そして、その分析と実行の最後には、他社が参入することを防ぐ、Moatが築き上げられていることがビジネスにおいて理想の状況であると言えるでしょう。

PERSONA

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