1on1ミーティングは、上司と部下が1対1で定期的に行う意見交換のことを指します。
この記事では、1on1ミーティングの実施方法とその効果について解説します。
Contents
1. 1on1ミーティングとは何か
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で定期的に行う会議のことを指します。主に、部下のモチベーション向上や能力開発、問題解決を目的として行われます。人事評価面談とは異なり、1on1ミーティングは相互理解や部下の成長のために行われ、頻度も週1回など比較的高めに設定されます。
2. 1on1ミーティングが必要とされる背景
1on1ミーティングが注目されている理由の一つに、ビジネス環境の変化が激しいという背景があります。時代の変化に対応するためには、社員一人ひとりが主体性を持ち、変化を感じ取って柔軟に対応できるスキルが必要です。企業と従業員の絆や結びつきを表す「従業員エンゲージメント」が高い社員は、仕事に対して主体的であり、生産性の高い傾向にあるといわれています。その「従業員エンゲージメント」を高めるために1on1ミーティングが注目されています。また、少子高齢化による労働人口減少の背景もあり、自社の労働力確保も1on1ミーティングが注目されている理由の1つです。
リクルートマネジメントソリューションズの2022年の調査によると、1on1ミーテイングを導入している企業は全体で6割を超えてきています。
(出典:リクルートマネジメントソリューションズ「【調査発表】1on1ミーティング導入の実態調査」)
3. 1on1ミーティングの目的
1on1ミーティングの主な目的は、企業によりさまざまですが、主に社員のモチベーションを向上させること、部下の成長を促すこと、上司と部下の間の信頼関係を深めることです。定期的なミーティングを通じて、上司は部下の悩みや課題を理解し、部下は自分の意見やアイデアを自由に話せる環境を作ることができます。
(出典:リクルートマネジメントソリューションズ「【調査発表】1on1ミーティング導入の実態調査」)
4. 1on1ミーティングのメリット
1on1ミーティングには以下のようなメリットがあります。
- 部下との信頼関係が深まり、コミュニケーションがスムーズになる
- 部下の成長が加速し、主体的な行動が促進される
- 業務成績が向上する可能性がある
また結果的に、離職率を低下させられる可能性もあります。
(出典:リクルートマネジメントソリューションズ「【調査発表】1on1ミーティング導入の実態調査」)
5. 1on1ミーティングの実施方法
1on1ミーティングを適切に実施するためには、以下のステップを踏むことが重要です。
- ミーティングの目的を明確にする
- ミーティングで話すアジェンダを設定する
- 定期的にミーティングを実施する
- ミーティングの内容を振り返る
6. 1on1ミーティングの進め方のポイント
1on1ミーティングを効果的に進めるためのポイントは以下のとおりです。
- テーマは部下が決める
- 上司は傾聴に徹する
- ネガティブなことも共有できる場を作る
- ミーティングは定期的に行う
7. 1on1ミーティングで取り上げるテーマ
1on1ミーティングでは、以下のようなテーマを取り上げます。
- 業務上の問題や悩み
- 今後のキャリアについて
- 体調やメンタル面の状態
- 業務外の出来事
8. 1on1ミーティングの全体の流れとサイクル
1on1ミーティングの全体の流れとサイクルは以下のようになります。
- 予定と準備:
- マネージャーと社員は定期的な1on1ミーティングの日時を決定します。この日程は両者のスケジュールに合わせて調整されます。
- ミーティングの前に、マネージャーは社員の進捗状況や質問事項などを把握しておく必要があります。これにより、効果的な議論とフィードバックを行うことができます。
- ミーティングの開始:
- マネージャーと社員は指定された日時と場所でミーティングを開始します。場所は通常、静かでプライベートな空間が選ばれます。
- ミーティングの冒頭では、両者が挨拶し、互いの近況や進捗状況についての簡単な報告を行います。
- 進捗報告と課題の共有:
- このフェーズでは、社員の進捗状況、課題、目標の達成状況について話し合います。社員は自分の業務やプロジェクトの進行状況を報告し、マネージャーはそれに対してフィードバックやアドバイスを提供します。
- マネージャーは社員が直面している課題や懸念事項についても議論し、解決策を見つけるための支援を行います。
- 目標設定とキャリア開発:
- マネージャーと社員は将来の目標やキャリア開発について話し合います。社員の個々の目標やキャリアプランを共有し、それに向けた支援やアドバイスを提供します。
- マネージャーは社員の成長やスキルの向上に関する計画を立て、それをサポートするためのリソースやトレーニングの提供を検討します。
- アクションアイテムとフォローアップ:
- ミーティングの最後に、マネージャーと社員はアクションアイテムや次のステップについて合意します。具体的なタスクや目標を設定し、それを実現するためのスケジュールやリソースを確認します。
- フォローアップのための次回のミーティングの日時も決定します。次回のミーティングまでの間に進捗状況を確認し、必要な支援や調整を行います。
9. 1on1ミーティングのデメリットと注意点
1on1ミーティングにはメリットだけでなく、以下のようなデメリットもあります。
- 上司のスキルによっては悪影響になる可能性もある
- 時間を確保する必要がある
- 効果を感じるまでに時間がかかる
(出典:リクルートマネジメントソリューションズ「【調査発表】1on1ミーティング導入の実態調査」)
10. 1on1ミーティングの実践事例
1on1ミーティングを早い段階から採用し浸透している、LINEヤフー株式会社を紹介します。
(出典:LINEヤフー株式会社「オンラインコミュニケーション時代の部下と上司の信頼の育て方 「1on1」講座」、社内アンケートで見えた、ヤフーが“1on1”を企業文化になし得た理由 | HRオンライン | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)、ヤフーが実践した1on1のやり方・効果・マネジメントへの活用方法まとめ (unipos.me))
LINEヤフー株式会社では、経験と能力を持った個性的な人たちが経験学習のサイクルを高速で回すことで、もっとよい会社になると考え、1on1ミーティングを採用しました。
それまでの管理職の役割は、部下の手を借りて、自分の組織の成果を上げるというものでしたが、「社員の才能と情熱を解き放つ」というコンセプトを導入して、管理職が部下をサポートすることが管理職の役割という定義に変えたそうです。
1on1ミーテイングを行うポイントは、
・上司が話すテーマを決めるのではなく、まず冒頭で「今日、話したいテーマは?」「今日、何を話しますか?」と部下に聞いてから始めること。
・会話が盛り上がったとしても、相手にとってよいテーマかどうか分からないので、ひとつの会話が終わった際に「ほかに話したいことある?」と何度も聞くこと。
・最初の3分~5分間はできるだけ傾聴すること。
・「いいですね」「ありがとう」や「その話もっとしてよ」など相手に興味を示すこと。
・最後に「何か私に手伝えることはありますか?」と言って、やってほしいことを聞くこと。
といいます。
また、特に質問をする際に上司が気をつけるポイントとしては、
・質問する際に責めない。問いつめないこと。
・過去ではなく、未来に向けた質問を行うこと。
・上長は部下に対して関心を持つこと。
・課題は常に変化するので、何度も課題を聞くこと。
・上司は部下の考える時間をつくること。
が挙げられます。
1on1ミーテイングを導入したことで、LINEヤフー株式会社には様々な変化があったといいます。
上司と部下のコミュニケーションが活性化し、より関係が深まり、その結果自己開示をしてくれる人が増え、チームでビジョンを共有できるようになったといわれています。つまり、従業員一人ひとりへの理解が深まったことにより、個人の強みを生かせるチームづくりができるようになりました。
また、定期的に1on1を実施して対話の場を設けることで、日常のミーティングではなかなか話しにくい些細なことも、1on1であればフランクな雰囲気のなかで伝えることが可能になりました。それによりコミュニケーションが活性化し、その結果業務における混乱やトラブルが減少し、業務効率化の効果も得られたそうです。
「ヤフーの1on1」は、導入からもうすぐ10年になろうとしています。導入時に新卒で入社した社員が部下を持つようになったり、プロジェクトのリーダーになったりするなど、いまでは上司の立場で1on1を行うケースも出てきており、LINEヤフー株式会社には1on1ミーティングがなくてはならない存在となっています。
11. まとめ
1on1ミーティングは、部下の成長を促し、上司と部下の信頼関係を深めるための有効な手段です。しかし、適切に行うためには、目的の明確化や定期的な実施、適切なテーマ選定などが必要です。また、上司のコミュニケーションスキルも大切な要素です。このようなポイントを押さえながら、1on1ミーティングを行うことで、部下との信頼関係を深め、部下の成長を促進することが期待できます。